15.上海の街角で
作詞:佐藤惣之助
作曲:山田栄一
リラの花散る キャバレーで逢うて
今宵別れる 街の角
紅の月さえ まぶたににじむ
夢の四馬路(スマロ)が 懐しや
「おい、もう泣くなよ。あれをごらん。ほんのり
と紅の月が出ているじゃないか。何もかもあの
晩の通りだ。去年初めて君に逢ったのも、
ちょうどリラの花咲く頃、今年別れるのも、
またリラの花散る晩だ。そして場所は、やっぱ
りこの四馬路だったなァ。あれから一年、激し
い戦火をあびたが、今は日本軍の手でたのし
い平和がやって来た。ホラお聞き、ネ、昔な
がらの支那音楽も聞こえるじゃないか。」
泣いて歩いちゃ 人目について
男船乗りゃ 気がひける
せめて昨日(きのう)の 純情のままで
涙かくして 別れよか
「君は故郷(くに)へ帰って、たった一人のお母さんと
大事に暮し給え。僕も明日からやくざな“上海
往来”をやめて新しい北支の天地へ行く。そ
こには僕の仕事が待っていてくれるのだ。ね
え、それがお互いの幸福だ。サァ少しばかり
だが、これを船賃のたしにして日本へ帰ってく
れ。やがて十時だ。汽船(ふね)も出るから、せめて
埠頭(バンド)まで送って行こう。」
君を愛して いりゃこそ僕は
出世しなけりゃ 恥しい
棄てる気じゃない 別れてしばし
故郷(くに)で待てよと いうことさ
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